- [文部省科学研究費補助金]
- 奨励研究A(単独研究)
- No. 11750720 (平成11-12) [代表者:八ッ橋知幸] 220万円
- 「超高温(ホット)分子を多光子反応の中間体とした新規反応の探索」
- 研究成果
- 学術論文
- Yatsuhashi, T.; Nakashima, N. J. Phys. Chem. A
2000, 104 (2), 203-208. (grant No. specified)
- Yatsuhashi, T.; Nakashima, N. J. Phys. Chem. A 2000,
104 (6), 1095-1099. (grant No. specified)
- Yatsuhashi, T.; Nakashima, N. J. Phys. Chem. A 2000,
104 (46) , 10645-10647. (grant No. specified)
- Yatsuhashi, T.; Nakashima, N. Bull. Chem. Soc. Jpn. 2001, 74 (4), 579-593 . (grant No. specified)
- 学会発表
- 1998年 Asian-Pacific Forum on Science and Technology(金沢) 1件 発表者 八ッ橋
- 1998年 光化学討論会(東京) 1件 発表者 八ッ橋
- 1999年 日本化学会春期年会(神奈川) 1件 発表者 八ッ橋(口頭)
- 1999年 光化学討論会(岡山) 2件 発表者 八ッ橋、秋保
- 1999年 分子構造総合討論会(大阪) 1件 発表者 八ッ橋
- 1999年 IXth International Conference on Photochemistry(米国) 2件 発表者 八ッ橋(口頭)、中島
- 2000年 日本化学会春期年会(千葉) 1件 発表者 八ッ橋(口頭)
- 2000年 18th IUPAC Symposium on Photochemistry(ドイツ) 1件 発表者 八ッ橋
- 2000年 光化学討論会(北海道) 3件 発表者 八ッ橋(口頭)、細井(口頭)、鈴木
- 平成11年度科学研究費補助金実績報告書(研究実績の概要より抜粋)
- 当該研究課題の成果について国内発表4件、海外発表2回を行った。また、アメリカ化学会発行の論文誌The
Journal of Physical Chemistry Aに二件の論文を発表した。初年度は真空紫外レーザー光によりホット状態(光励起直後に無輻射失活によって生じる超高温(高振動励起)状態)の生成があるかどうか、ホット状態生成が気相光化学反応においては支配的、普遍的であるかどうかの可能性をこれまでに試みられていない種々の分子において探索することを目的とした。このため、まず測定装置の改良、特に測定ノイズ低減の達成、試料設置部の改良を行い良好な実験データを得ることが出来た。対象とした有機分子は多岐にわたるが、アルキルアレン類、アルキン類、多環芳香族化合物、カルボニル化合物、アミン等で、常温では蒸気圧が小さくこれまでに実験が試みられていない分子である。カルボニル化合物では1光子反応ではあるが、有機合成化学的に重要な中間体であるベンザインの生成がホット状態からのものであることを示すことができた。さらにクマリンではホット状態を経由した2光子反応による新たな反応、脱一酸化炭素反応を見いだすことが出来た。これまで炭化水素化合物以外ではホット分子を経由した多光子反応は見いだされておらず、これが初めての例であり、従来光化学的に不活性だと考えられてきた分子も、ホット分子機構の特色を最大限生かした研究を進めることで新規反応を開拓することが出来ることを示した。
- 平成12年度科学研究費補助金実績報告書(研究実績の概要より抜粋)
- 当該研究課題の成果について国内発表4件、国外発表1件を行った。アメリカ化学会発行の論文誌The
Journal of Physical Chemistry Aに1件の論文を発表した。また日本化学会欧文誌のAccountsに原稿を依頼され、初年度の結果を含めて種々の分子に気相中、真空紫外レーザー光を照射して生じるホット分子の反応の多様性、その他の反応機構に関する結果が平成13年度4月号に掲載される予定である。本研究費補助金の最終年度においては初年度に得られた結果を基に主に多光子反応、即ち単一のレーザーパルスで誘起するホット分子反応に着目した。「レーザーによる多光子反応」の報告ではそのほとんどがイオン化である。特に真空紫外光を用いた場合は2光子で容易に分子のイオン化ポテンシャル以上のエネルギーとなるためイオン化が生じるが、ホット分子機構の場合、エネルギーは極めて高速に分子全体の振動エネルギーに分配されるため2光子目を吸収する場合においてもイオン化ポテンシャルを越すことは無い。そのため化学反応が生じることが大きな特徴である。これは溶液中での反応と全く異なっている。多光子吸収により反応速度の数桁に及ぶ飛躍的な増大が期待出来ること、中性ラジカルを生じること、通常の熱反応と異なり生成物は短時間で冷却されるため熱的には不安定である生成物が期待できることも大きな特徴である。試みた分子の多くは2光子過程で反応が生じたが、トリフェニルメタンでは3光子吸収により反応が進行する例を見いだした。従来光化学的に不活性だと考えられてきた分子も、ホット分子機構の特色を最大限生かした研究、特に多光子反応を進めることで新規反応を開拓することが出来ることを示した。